北京のサービス業 3

こんにちは。

RINです。

今日もあなたとここで出逢えたご縁に感謝です。

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登場人物
・ある男
・年下の彼の友人S
・洗車サービス事業を始めたというSの友人H
・Hの洗車サービス要員たち



騒ぎが一段落してホテルのHの部屋の中

事務所兼自室であるHの部屋は3階にある

窓からの眺めはなかなかのものである



思い思いに各自陣取る洗車サービスの要員たち

陣取るというよりどうも所在なさげだ



センサー式自動ドア玄関の入り方出方の臨時講習の後

彼は前もって準備しておいた日本製の缶ビールを

自社の臨時社員である彼らに一人ひとり手渡した



この日のために

日本から2ダース分送らせておいたとっておきだ

この日本製の缶ビール

顔見知りの公安幹部さんはこれがとってもお気に入りだ

なんでも特権階級ステータスを心地よく刺激するらしい

一般の中国人の口にはまず入らない代物だ




普段の労をねぎらう言葉も忘れない

セリフは前もって暗記していた

なかなか俺もやるじゃないか

なんて一人心の中でほくそ笑んでいた



ホテルマンに念押ししてリクエストしておいたので

チンチンに冷えている


奮発した料理はルームサービスであらかじめ用意してあり

エクストラベッドよろしく運び込んだ事務用机の上に

こちらは堂々とした風情で鎮座ましましている



起立した全員への謝辞の後

おもむろに自分の缶ビールのプルトップを開ける

リーダー格の男に(乾杯)の音頭をとらせる

「カンパーイ」

ここは事前に打ち合わせしてある



・・・
・・

「ン!?」

「あれ!」

・・・
・・


当然

自分の頭の中では

「プチ」「プチッ」とプルトップを開ける音が続けて飛び込み

「カンパーイ」の唱和

ひとしきりの喉越しとしばしの間の後

拍手!!!



それがない。

カンパーイはあったのだが

誰も缶ビールのプルトップを開けていない



どうしてだ

酒は飲まないのか

いやいやそんなことはない

彼らの宿舎ではほぼ毎晩酒盛りと聞いている

自分も何度か訪れたときに

それを見てもいる



缶ビールを飲まずに眺めているものがいる

蓋のところを医者の打診法よろしく

コツコツと叩いている者もいる

じっと見つめたままの者がいる




分かった!

Hはまた瞬間に理解してしまった

ついさっきの自動ドアの悪夢と同じように




プルトップの開け方!が、

わからないのだ!




瓶ビールしか知らないのだ

彼らにとっては

生まれて初めての

「缶ビール体験」

なのだ。





今度は

この日2回目の臨時の講習


表題

缶ビールの正しい飲み方(副題:プルトップの開け方)

開催を覚悟した。


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ではでは。 (!・・)


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